2010年6月29日火曜日

私的ドイツ代表の楽しみ方 part1: GK

では、話題の新鮮度がなくなる前に(笑、
サクッと今大会のドイツ代表の話。
ポジションごとにやった方が書き易そうに
思ったので、まずはキーパーの話から。
 
今大会のドイツ代表正ゴールキーパーはノイアー。
ドイツのキーパー育成には今なお定評があって、
ブンデスリーガの全体的なレベルで、
英、西、伊に及ばずといえど、
キーパーの水準だけはそれらと互角、
あるいはそれ以上だとしばし言われる。
1年前の今頃なんかは正GK候補が4人もいて、
監督レーブの嬉しい悩み所だ、とか言われていたのだが、
その後エンケの自殺やアドラーの骨折があって、
現在のノイアーがゴールマウスを守ることになった。
去年のU21欧州選手権優勝組なので、
もっと若いかと思っていたが、現在24歳。
それでもGKとしては若い方だろうか。
 
日本の実況・解説を聞いていると、
キーパーに関して勘、経験、気合で評価しているのを
よく耳にするのでは、と思う。
いわゆる「当たっている」とか、
「気持ちの入ったプレー」というやつである。
積み上げられた経験が勘を養い、
気迫のプレーでチームを鼓舞し、
自身はスーパーセーブを連発する。
そんな感じが期待されているキーパー像なのだろう。
 
これに対し、ドイツで徹底的に叩き込まれるのは
基本技術の習得とポジショニングである。
ポジショニングとは、簡単に言ってしまえば、
「局面ごとにどこにいるべきか・いなければならないか」
の事である。
正しいポジショニングの位置は、どこにいればゴールを
守ることができる確率が一番高くなるか、
ということを元に決定される。
その確率分布は現行の戦術理論であるとか、
これまでのあらゆる試合の分析等々によって、
統計的にかなり固められた結果がある。
だから正しいポジショニングの取り方を
習熟しているキーパーは、それだけで、
個人が我流で何年もかけて得た経験よりも
はるかに多くの先人の経験に支えられていることになる。
また逆に、正しいポジショニングの取り方が
出来ないキーパーは、自らの手で自ら、
及びチーム全体を窮地に追いやっているので、
ブンデスでは使ってもらえない。
というか、場合によっては即解雇‥。
 
ともあれ、キーパーに試合中求められる事は
そうした理論への理解とその適用の能力を示すことである。
気合も重要といえば重要かもしれないが、
より重要なのは冷静さと集中を失わないこと、
ということとなる。
 
スーパーセーブというものは、
実は多くの場合、キーパーがそもそも
直前にポジショニングを間違っていて、
それをセーブで自分で取り戻しただけ、
という、自分でまいた種の自己回収であったりするわけで、
実はスーパーセーブがない方が
いいキーパーだったりする。
仕事をしていないように見える時の方が
仕事をしているのである。
その意味において、ドイツのキーパーは
いいキーパーであって、ノイアーもそうである。
若さは経験不足ということにはならない。

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