2010年7月4日日曜日

私的ドイツ代表の楽しみ方 part6: アルゼンチンに勝つ

アルゼンチンに完勝。
 
前に書いた様に、ポイントなるのは
レーブが守ってくるのか、攻めの姿勢を貫くか、であった。
 
蓋を開けてみたら驚いたことに、
これまでの4試合以上に積極的な攻めを展開した。
ラーム&ボアテングの両サイドバックは
どんどん攻撃参加してきたし、
シュバインシュタイガー&ケディーラのボランチも
前の方で目立っていた。
挙句、センターバックであるフリードリッヒにゴールが生まれたり。
代表初ゴールがこんな大事な場面。
 
アルゼンチン側からすれば、常に後手後手に回っていた。
前半は後ろからの押し上げが弱く、
攻撃と守備の選手の間が分断されていた。
ドイツの両サイドバック裏のスペースとかは
使えそうなものだが、そういう意図を持った動きも
見られることはなかった。
こういったことは試合が始まればすぐに分かることで、
監督は直ちに修正していかねばならないことでもある。
マラドーナは常にピッチサイドに立って、
何か言ってもいたのだが、
何の指示でもなかったのでは、と思わざるをえない。
 
マラドーナにはドイツが一番恐れていたメッシのドリブルを
生かすという考えも欠落していたようで、
メッシが唯一「華麗」といえるドリブルを披露したのは
自陣奥という有様だった。
 
遅まきながらとはいえ、
後半から上のアルゼンチンの「分断」は修正された。
ドイツ側からすると、それとともにプレッシャーが激しくなって、
ここがドイツにとって一番キツい時間帯だった。
だが、アルゼンチンは最終的な決定打を欠き、
逆にドイツはこの時間帯を自分たちで追加点を上げる
という最高の形で乗り切る。
 
大選手が監督をやるとどうしても起きがちなことは、
自分がかつて個人の力で状況を打開したようなプレーを
選手に対しても「期待」してしまうことである。
それでちょっと良い方向にプレーが行く兆しが見えると、
ついその調子で次こそは、と考えてしまうのだろう。
アルゼンチンくらい上手い選手が揃っていると、
この考えは益々ドツボにはまっていく。
自分から言わせて貰えば、後半開始時に、
あるいは遅くとも後半開始とともにドイツの側が
何もいじっていないのを確認した段階で、
攻撃的な選手を入れるか、
メッシにFWの仕事に専念させる布陣にチームをシフトさせるか
しなければならない。それが普通。
動いてきたのが2点目を入れられてから、
これでは全く遅い。
時間もその時には既に後半25分も過ぎていて、
つまり半分以上の時間を無駄にした。
さらに、その後投入されたアグエロに与えられた時間は15分。
明らかにせいぜい1点しか計算できない。
 
逆にドイツ側。
アルゼンチンがより攻撃的にくることは分かる、
首尾よく2点目も入った。
時間的にも守って勝ち抜ける。
だが、ここからがポイント。
そこでレーブの採った作戦は、
さらに攻撃する、というものであった。
「中央に入ればさらに強い」と言われた守備を見せていた
ボアテングに代えて、ヤンゼン。
サイド「バック」をサイド「アタッカー」に代えた。
そして追加点。
さらにこちらも守備でも力強さで目立っていたケディーラに代え、
クロース。前に言った完全に攻撃的MFの選手である。
完全に狙いは「完勝すること」であった。
そしてまた追加点。
 
アルゼンチンは攻めてもロング/ミドルシュートばかり。
前に、ドイツではキーパーのポジショニングミスで
クラブを解雇されうるという話をした。
実際解雇した人間がいて、マガトという監督である。
現ドイツ代表GKノイアーが所属するシャルケの監督である。
ノイアーが普段置かれている環境とはそういう環境。
彼からポジショニングミスは最も期待できない。
ロングシュートやミドルシュートは
彼から最も点を奪い辛い攻撃方法と言える。
だが、アルゼンチンはこれを前半から繰り返し、
これは後半になっても修正されず、
試合が終わるまで直らなかった。
ノイアーは何度正面でボールをキャッチできたことか。
ここにはアルゼンチン側の相手の研究不足が指摘できる。
 
さらに今回の試合前話題になったいわゆる「舌戦」。
自分は一々全部追っていないが、
ドイツ代表には優秀なメンタルメディカルスタッフ
(あるいはメンタル管理の方法)が存在していることは
06年の段階で既によく知られた話。
前半の様子からして、
これをやって明らかに損したのはアルゼンチン。
まあ、マラドーナがアルゼンチンの監督に就任したのは
一説では金持ちの道楽らしいし、
さすがに彼に任せるわけにはいかないから、
コーチにはそれなりの人材を起用していたはずで、
全部マラドーナの責任というわけではなかろうが、
どうにも調子こいたマラドーナの自滅感がぬぐえない。
対してレーブの計算の方は、この試合、
ほとんど狂わされることはなかったと言っていい。
監督の差、である。

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