経過3に行く前にちょっと背景説明。
BVGと言うのはベルリン市交通局。
ベルリン市内の鉄道・地下鉄・バス・路面電車‥と、
主要交通機関を独占している会社である。
電車内の検札はしかし、BVGが直接行っているわけではない。
検札はGSEという警備系(?)の私企業に委託されている。
ベルリンではちょくちょくSバーンが落書きされただの、
それこそ壊されただのという話が新聞に載るのだが、
自分は今回の一件で、そういうことをする人間の
気持ちがちょっとだけ分かった気がした。
何もしていない人間に支払わせるということは、
逆に言えば、向こうがこちらに借りを作っている
ということでもあると考えるなら、
それを何らかの形で取り立てようと思う人間もいるだろう。
7ユーロ分の落書き、40ユーロ分窓ガラスを割る、
といったように。
何かバスの運転手が襲われるとか、
そういったことも色々蓄積された鬱憤みたいなのが
あってのことなのかもしれない、とか。
だが、上に書いたようにBVGはGSEではない。
仮にそれがBVGによる批判逸らしなのだとしても。
このGSEという会社、実は調べてもあまりよく分からない。
自分の感覚だが、多くの人は存在を知らないのでは、
とも思う。つまり検札もBVGがやっている、と思っている
人が多そうだな、と。
このGSEはあまり表沙汰にはなってこない。
それほど新聞を読んでいるわけではないけれど。
メディアが扱わないとかっていうのは
メディアの問題なので特に書くことはない。
が、このGSEという会社自体、非常に不透明なものを
抱えている感があるというか、何か胡散臭いものがある
ということは調べてみて分かった。
例えば。
GSEはキセル犯取締り1人についていくらいくら、
と報酬を出している(金額は明らかにされていない)。
そのことによって検札員の取り締まり意欲を煽っており、
検札員は検札員で自分を「賞金首稼ぎ」だと
感じ出す人間が続出しているのだとか。
さらに低賃金と法的にアウトな労働時間。
これらが相まって、捕らえた獲物は逃さない、
いや、逃せない。
パスポートのコピー認証なんて
留学するときにさえ必要なかった。
極端に言って個人が信用するか否か程度の話。
だが何を言おうと「仕方がない、今回だけ」とはならない。
モラル<金。
普段から罪悪感を感じるようなことをしている人間ほど
日曜には教会に行きたがるもの。
だが、他者にかける慈悲を持たない人間に
神が慈悲を向けてくれるとでも?
それでも教会税は払っているのだろうな。
その偽善ぶりには脱帽せざるをえない。
以下の話のために「belästigen」という
ドイツ語に馴染んでもらおう。
「ベレスティゲン」と読み、
意味は「煩わせる、悩ます、つきまとう」。
Lastというのが「重荷、負荷」さらには「負債」を意味し、
すなわち、この動詞は主として精神的な苦痛を
表現するのに使われる。
「セクハラ」の「ハラスメント」のドイツ語訳は
ベレスティグング(名詞形)である。
乗車券の検札も、これはかなり軽微
(システムもそういう決まりがあることも
みな理解しているため)な部類とはいえ、
それでもわざわざ乗車券を出さねばならないので
ベレスティグングである。
それゆえ検札はベレスティゲンする相手を選ぶ。
無論ここには人種差別主義的な要素と、
ドイツ人がほとんど本能的と言っていいほどのレベルで
身に染み付けて来た権威主義的な要素が交錯する。
ドイツに来たての外国人はまず物乞い、宗教等の勧誘、
こういったものに付きまとわれる。
それらはベレスティグングであり、
ドイツ人にそういう事をすると物凄い剣幕で怒鳴られるだろう。
あるいはそこから何らかの形で彼らに非難の空気や
不評が形成されるかもしれない。
下手すると新聞等で「問題」として
取り上げられてしまうかもしれない。
そういうことが分かっているので、
彼らは「ドイツ人でない人間」を主なターゲットにする。
ベレスティゲンしても自分に二次被害が返って来ないよう、
首尾よく計算された防衛線を張っているわけである。
検札もこれと全く同様の行動を取る。
自由大生のためにあると言って過言ではないU3に乗っていて、
要は自分の周りの大半がゼメスターチケットで
乗車している状態で、身分証の提示を自分だけが求められる、
そんなことはかなりざらにある。
前に、「自分はトルコ系だけどトルコ人じゃない、ドイツ国籍も
ドイツ発行のパスポートも持っている」と検札に怒鳴って、
あるいはほぼ罵声を浴びせていた女の子もいたのだけど、
ともあれ、そういうのももう何回か目にしている。
メランコリー気質の人間の内に抱える鈍い怒りの向かう先が
ドイツでは「外国人」であるというわけ。
その手の低級サディスムから快楽を引き出す
(そしてまさに「報酬」も得る(笑))
人間はそれによって自分の存在価値を確認するのだが、
何のことはない、ドイツではこの手の人間は
昔ある時期そこら中に溢れていた。
ナチス親衛隊によるユダヤ人狩りと密告報酬、
両者を足して2で割って現在の社会システムに統合したのがGSE。
ちなみにドイツ人と思しき人が身分証の提示を
求められているのは、6年いて1度しか見たことはない。
検札は「外国人」と同じ車両に乗り込んでくる傾向がある。
それは長く居ると経験的になんとなく分かってくるもの。
色々調べてみるうちに見たインターネットの
掲示板なんかでは、
最近一日2、3度検札が来るんだが、
との外国人の書き込みに対し、
「オレんとこに最後に検札が来たのなんて3ヶ月以上前だぜ」
とかいうドイツ人による返事があって、とても笑った。
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