2011年5月21日土曜日

パラドックス・ドイツ語2

前回の続き。
というか今回の件があったので
前回の話を前置き的な位置づけにして書いた。

前回は日本語が分かるとオチも分かってしまった話。
今回はドイツ語か料理の知識があると先が読める話。

発端は砂糖だ。
ドイツでで普通に生活していると過剰摂取しがちな
ものの1つに砂糖がある。
例えば1カップのヨーグルト(150g)。
これだけで成人男性が一日に必要とする砂糖量の
4から3分の1が取れることになってしまう。
チョコレートは割りと常備食として、
そうやって計算していくと、
ゼリーとかプリンの出番は無い。
だがある時ゼリーが食べたくなった。
そこで、ゼラチンを買ってきて
砂糖を入れずにゼリーを作ればいいじゃないか、
という考えに至った。
どの道例えばレモン味なら甘さなんて要らないかな、と。

さて、買ってきたゼラチン、
その箱の表にはでかでかと「Zum Kochen」なる文字。
zuというのは英語でto、
mが付いているのは英語で言う冠詞theが
zuにくっ付いて短縮形になったもの。
Kochenというのは動詞で「沸騰させる」。
例えばA zum Kochen bringenという
料理レシピ頻出の表現がある。
bringenはこれまた英語にもbringがあるので
容易に想像がつくと思うが、
これは「Aを沸騰させる」という意味である。
例えば水、牛乳、等々。

そんなわけで、自分は上の「Zum Kochen」を
「要沸騰」とか、そんな意味で受け取った。

さて、実際調理の段階になって、
箱の裏に書かれた詳細な手順を読んだところ、
裏面には逆に「NICHT zum Kochen bringen」とあった。
nichtはnot。
それも大文字で強調してある。
さて、どっちが正しいのか。
丁度3袋入りだったので両方試すことにした。
あ、ちなみにパッケージには2袋入りって書いてあった。

まず沸騰させてみた。
料理の知識がある人はすぐ分かると思うが、
ゼラチンは沸騰させてしまうと固まらなくなる。
一昼夜置いてレモン水のままだったので
調べてみたら、そんなことが書いてあった。
澱粉のように糊化・老化で固まるのではなかった。
失敗。

次に全く沸騰させずにゼラチンを溶かしてみた。
どうも水の温度はただゼラチンを溶かしやすくするため
だけに上げる必要があるようだし、
買ったゼラチンは水に普通に溶けていたので。
これはそういうものなのかもしれないが、
ただ前回、作っている段階からして
あまりに今後固まる気配のないほど
水っぽかったので、今回は2袋使った。
1袋に対し500mlの水を使うので、
大量のゼリー(水)が出来上がってしまう。
最初の日からそれなりに間を空けていたとはいえ、
最初の500でもう結構飽きていたので、
残り2袋一気に使ってしまいたかったというのもあった。
固ければ固いでもいいではないか、もうこの際。
さて結果。
このブログの過去記事を記憶している人は
これまた既に勘付いているかもしれないが、失敗。
やはり一昼夜置いてもレモン水だった。
何が原因かというと、
ゼラチンは冷やさないと固まらない。
うちには冷やすための冷蔵庫がない。
一度目の失敗の後、「ゼラチン」「固まらない」とかで
検索した結果出てくる記述は沸騰に関するもの。
日本人にしろドイツ人にしろ冷蔵庫は前提なようで、
それが無くて冷やせなかったから失敗というのは
あまりない話なのだろう。
自ずと検索にも引っかかりづらくなり、
自分も検索ワードをちょいちょい変えつつやって
少しして出てきたという感じだった。

というわけでレモン水を1リットル飲んだという話。
‥ではないよ。
「Zum Kochen」の種明かし。
Kochenには「沸騰させる」以外にもう1つ意味があって、
「調理する」、英語のcook。
だからパッケージ表の「Zum Kochen」は「調理用」の意。
(ということは裏の意味は「調理に用いるな」?(笑))
そんなわけで意味が異なるのに(あるいは、異なるとはいえ)
ポジティブな命題とネガティブな命題に同じ語句を
使ったことにより生まれたパラドックス。
日常言語におけるシンタックスとセマンティックスの混乱とも
言えるが、シンタックスの解釈、あるいはそこに
何らかの語であれ記号であれを用いるに際して、
まさにそのほんの一瞬に実はセマンティックスによる
判断が介入しており、そして記号はその使用以外の
何物でもなく‥云々、よくある話。
だがかじったことのある人には当たり前すぎ、
かじったことの無い人には何か小難しい話をし出した、
とかなって、結局誰の目にも余るものとなる前に、
この辺で話を切り上げようか。

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