これは多分まだ書いていなかったはず。
必要前提知識:
・Ja‥「はい」、英語で言うところのYes。
・Nein‥「いいえ」、英語で言うところのNo。
だいぶ前になるけれど、電車に乗っていた時の話。
向かいの席にベビーカーを引いた男性が座っていた。
ベビーカーの中の赤ちゃんの年は
言葉を話し始めたばかりといったくらい。
その赤ちゃんが手にした玩具だったか
食べ物だったかを振り回し始めた。
父親は「Nein! 」(=「そういうことをしては駄目だ」)と言った。
赤ちゃんは「Nein‥」と父親の言った言葉を反復した。
それに対して父親は「Ja」(=「そうだ」)と言った。
赤ちゃんは困った。
自分の行為が正しいと言われているのか、
間違っていると言われているのか、
いわゆる決定不能に陥ったわけである。
こうして文脈次第ではあるが、
ドイツ語ではたった3語でパラドックスを
起こせるこということが実証された。
一番最初のNeinが相手の行為に対する言及であるのに対し、
最後のJaがその前の相手の発言に対する言及であり、
言及している対象がそれぞれ異なっていることから
このパラドックスは生じている。
だからちょっとよく見てみれば分かるように
これは厳密にはパラドックスではない。
少なくとも容易に回避可能である。
だが「容易」かどうかにはいささか留保がいる。
というのも、上では確かに状況を分かりやすく
するために幾分敷衍して発言を訳したとはいえ、
日本語はそもそも2つ(言うなれば記述のための言語と
行為遂行のための言語)を分けている。
「1+1=3」は「正しくない」のであって、「ダメ」ではない。
トラックが来ているのに道路に飛び出そうとしている子供は
正誤云々より「ダメ」と言って留める。
だがドイツ語ではどちらもNeinである。
英語でもNoだろう。
そして自分の知る限りと推測では、
ほぼ全てのヨーロッパ系言語でもそうだろう。
「容易」なのは実は日本語を使う人に
とってだけの話なのかもしれない。
中学以来というもの、
「Yes」は「はい」、「No」は「いいえ」
と教えられてきはしたが、
実はそれほどきちんと対応してはいない、
とか何とか話はいくらでも広げていけそうだが、
そろそろ締めの言葉を見失ってきたので、この辺で。
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